日本!(お神楽・田楽)
No.24 藤守の田遊び
撮影場所&日;静岡県志太郡大井川町、大井八幡宮、平成19(2007)年3月17日
撮影機材;Nikon D70s+SIGMA10-20mm、D80+VR18-200mm
現地情報;駐車場あり(自衛隊基地臨時駐車場は22時まで)、屋台あり

『藤守の田遊び』は源頼家の時、元久2(1205)年正月17日に「川除け八幡宮」として社殿が再建されたときに、例大祭と田遊びが奉納されたのが最初という。そして今日の様式が定まったのは、室町時代末の元亀年間(1570〜1573)だという。
現在、全25番と番外2番(未演舞曲を含む)が伝承されて、毎年3月17日の午後6〜11時に大井八幡宮拝殿前の特設舞台で奉舞されている。ただ、演舞の日以前の3月10日には「帳付けの儀」から舞の翌日の「御供割」まで9日間にわたって、何らかの儀式が行なわれる。当日は舞の前に「内外祭の儀」「的射の儀」が昼間に行なわれるなど、大井八幡宮の祈年祭に関連しながら祭事が順序だって行なわれる。
『藤守の田遊び』を拝見した印象では、その色彩鮮やかさと華麗さが驚きである。当地から直線距離でも近い牧之原市の、『蛭ヶ谷の田遊び』が補陀落思想を取り入れ、呪師芸が前半にあるなど、邪霊祓に重きを置き、装飾性が希薄で色彩的にも地味で呪術性が強いのに比べると、その違いに驚かされる。
藤守では“ショッコ”と称する造花の冠を付けて舞う曲が多いが、特にショッコでも万燈火と呼ばれる造花をかぶった、第21番「猿田楽」は一番華麗である。伝承では今日の様式は450年も前に出来たというが、ここまで飾が肥大化して風流化したのは、もっと後世ではなかろうか。月の出から月の入りまで、かつては舞われていたというが、昔の照明は月明かりに蝋燭、松明くらいであった。今日ではフラッシュも撮影に必要が無いほどに電灯で強烈に明るいが、文明開化でガス灯や電灯が登場する以前の、祭りが予祝行事として民の信仰心を直接受け止めていた昔とはショッコの見え方も異なっているはずである。その見え方は、民が眠る頃、花の精が異界より出でて舞遊ぶような、精霊の、現在人にとっては怪奇ともいえる精霊の舞であったろう。それはまさにアニミズムの世界であり、日本の神々の信仰の中核的諸霊の世界である。民は月明かりの下、農耕予祝として五穀の精霊を舞遊ばせていたのだ。
もう一曲、興味深い曲がある。第14番「孕早乙女」で、太鼓を抱いて舞う。それはカンコ踊・太鼓踊のいでたちである。カンコ踊・太鼓踊で太鼓は、遠雷の感染呪術で雨乞い祈願である。太鼓は雨乞いの呪具であるが、その太鼓を抱いて舞うのが孕みだとしたら、各地の太鼓踊なども、太鼓は単に遠雷を呼ぶというだけの呪具ではないと、藤守の関連からも思う。

《参考文献》
【藤守の田遊び】大井川町教育委員会

上右写真;第1番「長刀」



上左写真;第12番「田植」、 上右写真;第14番「孕早乙女」

上写真;第5番「荒田」

上写真;第8番「鳥追い」

上左写真;第20番「間田楽」、上右写真;第21番「猿田楽」

上2枚;第21番「猿田楽」


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Last Updated  2009-12-29