日本!(念仏・風流)
No.17 寒水の掛踊
撮影場所&日;岐阜県郡上市明宝町寒水、平成19(2007)年9月9日
撮影機材;Nikon D70s+SIGMA10-20mm、D80+VR18-200mm
現地情報;売店一軒あり、駐車場・・周辺、土曜日は試楽で日曜日が本楽

掛踊りとは変わった呼び名だ。現在、掛踊という名称で行われている地域は、長野県下伊那郡や愛知県北設楽郡に分布しており、盆踊りや雨乞いとして行われる。今回の寒水掛踊りが行われた郡上郡では、前嶋氏の調査時点(1967年頃)には十箇所ほどで行われていたようである。もっとも“かけ踊り”と称するのは寒水だけで、他は“かき踊り”と呼んでいるようだ。その違いは豊年祈願の踊りを「かけ(掛)踊り」、その御礼の踊りを「かき(加喜)踊り」と、意味合いが微妙に違うようだ。 寒水の掛踊りの祭日(本楽)は寛政7(1795)年の『祭礼之覚』に、八月八朔とあるように、元々は旧暦八月一日に行われていた。八朔は作物の収穫目前の区切り、節日である。月々の節目に祓が行われていたこともある程で、特に八朔は重視されたようだ。収穫前で、“田の実(たのみ)”が“頼み”に転じ、産土神様や氏神様に初穂を献じたりもしていた。ここ寒水では、掛踊を奉納して豊穣祈願をしたのである。掛踊りの名称の由来は、願掛けだけでなく、踊る場所を移動していくことからきているとか、他の集落の衆と歌を掛け合ったからだとか、諸説ある。ここの掛踊りは宝永6(1709)年ころに、観音金仏二尊と共に母袋(もたい)村から移譲されたという(一説に栃洞村から)。母袋村からは明治12、13(1879、80)年頃まで寒水へ母袋村の代表者が祭りに参加して、実際に歌を掛け合ったという。

祭りは、午前11時50分に役者が屋号「中桁家」に集合する。中桁家の居間で正午、奏楽が始まる。これを「音合わせ」とか「拍子そろえ」とか呼ぶ。奏楽に続いて中桁家当主が四方を塩で清めてから紙垂付き榊で一同を修祓する。修祓に先立つ奏楽だから、単なる音合わせや拍子揃えでないことは明白であろう。この中桁家を「祭り宿」とか「打出し宿」とか云い、長らくは屋号「田代」家で行われていたのが、明治初年に中桁家に移譲されたのだという。「祭り宿」は世襲制である。このような家の存在は『西浦田楽(静岡県浜松市水窪町)』の「別当家」を連想するが、基本的には違うようだ。なぜなら中桁家には別当家のような祭祀権の集中が無いからである。寒水の掛踊の司祭者は、氏子から籤で選ばれた一年禰宜が行う。禰宜は掛踊だけでなく、白山神社、奥宮での奉仕も行う。修祓の後は「中桁前の踊り」であるが、役者は直接目の前の庭へ出ないで、台所を通って家の裏へ出る。そして裏通りを迂回してから前庭へ入る。役者が客人の前を通ることを憚って、このようにしたというが、それだけの理由ではないと思う。椎葉神楽(宮崎県)にも、台所から出てくる演目もあり、何らかの意味があるはずである。

寒水の掛踊(岐阜県郡上市明宝寒水)に登場する役者は、役柄が本当に多い。
露払・禰宜・鍵取・御供・出花持・神幟持・悪魔払・薙刀振・音頭・折太鼓・鉦引・ささら摺・田打・大黒・大奴・小奴・地唄頭・踊子・花笠・おかめ・大傘持そして踊幟持ちで、総勢130名くらいになる。その内、着面は悪魔払・薙刀振の赤鬼青鬼、大黒そしてオカメである。シナイを背負うのは、折太鼓3人・鉦引1人である。それにしても豪勢な役者陣である。このように膨大な役柄が出来たのは明治以降かとも思ったが、書籍を見ると(参考文献1、2)文政3(1820)年には現行に類似した陣容になっていたようだ。というか、時代によって役も増減があって、現行では廃れて参加していない役も記録では見られる。天明元年(1781)以来行われていて、戊辰戦争期に廃れたのは、鳥毛・侍・馬乗り等々である。

     《参考文献》
     1.【岐阜県の祭りから后枩郷緇蔀法一つ葉文庫
     2.【芸能の科学3・芸能論考1】〜「かけ踊の研究(前嶋茂子)」、平凡社
     3.【年中行事・儀礼事典】川口謙二、池田孝、池田政弘、東京美術

上左;中桁から神社へ、上右;中桁台所から前庭へ

上左;悪魔払、上中;大黒、上右;おかめ

上左;ささら摺り、上中;奴、上右;花笠

上左;笛吹、上右;中桁前の踊り

上;田打、花房付きの鍬を持って、輪になるように踊る

上;白山神社境内での、お庭踊り

上4枚;地面にシナイを当てながら踊る。頭を下げることは拝であるし、田植えや地霊鎮めの意味があるのだろう。

上;拝殿前の踊り。地面に擦るつけるシナイの周囲で、大黒が道化る。


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Last Updated  2010-01-01