日本!
No.12.幸娘(気多大社)平成17、18年
撮影場所&日;石川県羽咋市・気多大社、 平成17(2005)年12月31日
撮影機材;Nikon D70+Nikon24−120mm、D70s+SIGMA10−20mm

気多大社さんは、大乙貴命(おおなむちのみこと)を御祭神とする社です。この社では正月三が日に、御祭神と参拝者にご奉仕する、“幸娘(ゆきむすめ)”という巫女を一般募集しています。幸娘になる参加者は前日の大晦日の昼に気多大社に集合して、社に近い海岸で“禊(みそぎ)”をされてから、“幸娘”という巫女さんに転生します。
この禊は悪天候で一昨年、昨年と中止されているのですが、斎行されるかどうかは当日の天気を見て、昼に決定するとのこと。つまり行なわれるかどうか決ってから自宅を出発していては、間に合いません。自宅を早朝に出発、名神高速と北陸道を乗り継いで走って行きましたが、途中の鯖江あたりから吹雪となり、加賀ICからはチェーン規制も出ているという不安な状態でしたが、午後から回復するとの天気予報を信じて駆けつけました。
気多大社さんの御祭神の大乙貴命は、【古事記】の『大国主神〜根の国訪問』を参照するなら、須佐之男命から数々の試練を与えられ、それを乗り越えて須勢理毘売と結婚して仲むつまじかったことから、縁結びの神様としても有名であり、恋愛成就にも御利益があるそうです。
“幸娘(ゆきむすめ)”さんは、昨年は一般参加応募者が917人あり(中日WEB News)、そこから59人と現地の高校生による総勢100人のお正月の巫女さんです。参加された人の動機は、様々でしょう、、、。神様と参拝者の方々に御奉仕したい、参拝者と一緒に幸せになりたい、自分の可能性を試したい等々、、、。
ただ、中途半端な気持ちでは、北陸の厳寒で徹夜にもなる初詣参拝者への御奉仕も、そして禊(みそぎ)も乗り越えられないでしょうから、100人は精鋭巫女さんです。“禊”は清浄さを希求する神道ならではの行事ですが、やはり【古事記】には伊邪那岐命が黄泉の国の穢れを阿波岐原で祓ったことに由来しています。今では、神聖な儀式などの前に身を洗い清めることであり、社への参拝者が手水舎で手などを漱ぐのも禊の一種です。
幸娘さんは、気多大社から坂を400mも下った一ノ宮海岸で、大祝詞を唱えて禊されます。その一ノ宮海岸までは、一気に駆け下り、また帰る時も駆け上がって行きます。
海水に脚を浸して大祝詞奏上の前には、円陣になって『鳥船行事』も行います。鳥船は天鳥とも書きますが、伊邪那岐と伊邪那美が国生みで生れた船の神様のことです。この行事では、さながら船を漕ぐような格好を掛け声とともに行い、あるいは手を前後に伸縮させる気合を入れるような所作をします。心身と霊魂の浄化統一を、作法と言霊と呼吸法、意念じにより霊的浄化を目指すとのことですが、海水に浸かる前の準備体操的な意味合いと考えてもいいかと思います。
禊をされた後に社に戻り、黄緑色の上衣を着します。晴れて“幸娘”になったということでしょう。きっと三が日を御奉仕された方々は、心に大きなものを得て、御奉仕を終わられたことでしょう。
《参考文献》
【古事記】岩波文庫
【神道行法の本】学研
【すぐわかる日本の神々】監修鎌田東二、執筆稲田智宏、堀越光信、編集構成本田不二雄:東京美術

上左写真;社から一ノ宮海岸へ駆け込む。上右写真;大祝詞。

上左右写真;当日の現地は昼でも晴れ間に雪が舞う極寒でしたが、皆さん素敵な笑顔でした。


上写真;『鳥船行事』の後、一列に並んで大祝詞を奏上します。

上左写真;大祝詞を唱える。上右写真;鳥船行事は、円陣を組んで行います。

上写真三枚;禊の後、お社で上衣を着し、晴れて“幸娘”となる。


撮影年月日;平成18(2006)年12月31日
撮影機材;Nikon D80+VR18-200mm、D70s+SIGMA10−20mm

12月29日には当地でも遅い初雪が降ったが、能登半島地方の31日は曇りのち晴れ。天気次第では中止になる幸娘さんの海岸での禊にも影響は無さそうな天気である。平成17年の大晦日の北陸道はタイヤチェーン規制が出る状況だったが、18年は乾燥した路面を走行するスタッドレスタイヤ特有のサウンドを聞きながら走ることとなった。比較的暖かな境内であったが、日が沈むと底冷えする北陸の天気には変わりないだろう。お正月を迎える準備も完了した境内に幸娘さんが整列されるのを拝見すると、いよいよ新年かという実感が湧いてくる。昭和63(1988)年から応募を始めた幸娘さんも、今年は800人の応募があり、狭き門を通過した志高き女性ばかりである。天気が良いためか、アマチュアカメラマンも昨年の倍くらい、およそ60人が待ち構える中、一路一ノ宮海岸での禊にお社から駆け下って行く。禊を終え、お社で浅黄色の千早を着た幸娘さんは多くの奉仕希望者から選ばれ、何万人もの参拝者からも一目置かれ、憧れられる奉仕者としての自覚を得ていくのだろう。多くのカメラマンのシャッター音も幸娘に転生していく通過儀礼であるかもしれない、というのはカメラマン側の勝手な意見かもしれないが。
今回は一人の幸娘さん本人の許可を頂き、写真をUPした(ありがとう!)。


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Last Updated  2010-06-10