日本!(オコナイ)
No.2 志賀谷のオコナイ(華の頭) 其の一
撮影場所&日;滋賀県米原市志賀谷、平成20(2008)年2月9日
撮影機材;Nikon D300+VR18-200mm、D80+SIGMA10-20mm
現地情報;民間神事であり、撮影も正装が望ましい。撮影は要許可。

湖北地方だけで150箇所は在ると云われる民間神事の「オコナイ」、今回は米原市志賀谷を訪れた。旧山東町志賀谷は伊吹山南東に位置する戸数約100の農村で、志賀神社を鎮守神様としている。明治以前には正月二日から十日間に及んだらしいが、今日では二月に行われている。神事の日にちは変わったが、現在でも餅搗き、華作り、御幣挟みや神の膳など主要行事は継承されていて、古来より「華の頭(なはのとう)」と呼ばれた古式神事の面影がある。禰宜は一年神主の古制で区全域から選ばれるが、禰宜に限っては主に「オコナイ」の二日間の官職といえよう。かつては一年禰宜の間は肉食禁止など厳しい禁忌があった。
さて今回、私は9日の昼前から降り出した雪で渋滞する名神高速道路を走って、関ヶ原ICから出た。逸る気持ちで志賀谷(滋賀県米原市)の頭屋である公民館に着いた時は、「オンベ(御幣をこう呼ぶ)」が作られていた。出来上がったオンベは、御鏡餅やエビと共に注連縄で結界された床の間を聖域として安座される。志賀谷のオンベ(御幣)はここのオコナイの二大特色の一つであって、他に類を見ない形である。オンベの形はご神体を模しているのだという。オンベには洗米が和紙に包まれて吊るされ、それは脳味噌なのだという。カズラ紙は頭髪、扇は頭部、布は胴、幣は両手そして軸は脚部を象っているという。御幣は神々の依代であるのだが、特に志賀谷においては祖霊を招き降ろす依代である。本日(ほんび)の祭典では禰宜が拝殿でこのオンベを当屋(中心的責任者)に振りかざすが、これはオコナイを勤め上げた当屋への祖霊の挨拶なのだという。この辺りは、農耕儀礼だけでなく祖霊信仰が強く伺える。もっとも歳神様は祖霊であって穀霊ともなるから、分離して考えるのはよくないかもしれないが。いづれにせよ、志賀谷のオコナイにおいては神がオンベの姿となって顕現するのである。
オンベの手前には、御鏡餅がみられる。本日(ほんび)には、神社への献鏡行列で運ばれる。そしてここ志賀谷では、海老には見えない「エビ」が左上の柱にスルメに包まれて下がっているのが見られる。
「志賀谷のオコナイ」のもう一つの大きな特色は、「神の膳」と呼ばれる神饌の調進である。「神の膳」は午後8時45分から、男衆だけによって手際良く調理された。献立は御神酒・御供米・御汁(里芋親頭、鏑、牛蒡)・上盛(青豆、焼豆腐、煮昆布、干鮭)・膾(膾、大根細切)・皿(シイラ、鰯)である。このように「神の膳」は、山、里、海の御馳走であり、調理された「神の膳」は禰宜さんの御検分を経て、御膳箱に収められる。そして志賀神社本社と末社へ、献饌のために社参する。
志賀谷において、この集落だけの特色ある御幣や御神饌が供されていることは、地域独自の連帯と生産基盤の自立を示すものである。このような独自性のある神事が継承されていることは、誠に素晴らしいことと思う。
志賀谷のオコナイは、翌日の祭典へと続いていく・・・。

           《参考文献》
          【神々の酒肴 湖国の神饌】中島誠一・宇野日出生、思文閣出版
          【近江の宮座とオコナイ】中澤成晃、岩田書院

          《志賀谷の皆様にはお世話になりまして、御礼申し上げます。》

上左写真;「オンベ(御幣)挟み」と呼ばれる、オンベ作り。昔は作成方法は禰宜と2〜3人だけによって伝えられていたそうだが、今は氏子衆の皆によって伝承されている。
上右写真;オンベ、エビや大小御鏡餅などがみられる。

上写真;「神の膳」調進準備。

上写真4枚;「神の膳」の調進と仕上がり。

上左右写真;「神の膳」を禰宜さんが御検分される。

上左右写真;「神の膳」が納められた御膳箱と、切火する禰宜さん。

上左右写真;午後10時、禰宜さんが伴の者に御膳箱を担がせて、神社へ社参する。

上写真4枚;志賀神社の本社末社の八社に献饌。

【日本!(オコナイ)】〜No.3「志賀谷のオコナイ 其の二」へ続く、、、。


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Last Updated  2010-01-01