日本!(オコナイ)
No.48 野迫川村 北今西のオコナイ

奈良県吉野郡野迫川村北今西、 平成25(2013)年1月2日撮影

野迫川村には弓手原と北今西の二つの集落でオコナイがされていたが、弓手原は現在中止されており、北今西のみが5年ほど前から4日から2日に日付変更してオコナイをされている。
五條市から国道168号線を南下して大塔村小代から野迫川村へ入ったが、温かい日にもかかわらず日陰には先月の雪が凍結して残り、急坂と急カーブの隘路を辿って昼過ぎに北今西に着いた。オコナイがされる寿楽院では、準備の真っ最中であった。
尚、オコナイの翌朝には積雪となり、この地域を訪れるには冬用タイヤは必須(場合によってはチェーンも)である。

北今西のオコナイの特色は荘厳と、内容にみられる。

(荘厳の特異さ)
花会式を彷彿とする花で堂内を荘厳する、タテバナと称する和紙に黒と紅を塗った造花が存在すること。
各地の神楽宿の神庭を荘厳する結界の切り絵の存在。奥三河の花祭ではザゼチと呼ぶが、北今西ではジョウジキと呼ぶ。柄は一種だが30枚ほど切り抜き、寿楽院だけでなく隣接の勝手神社にも荘厳する。
モリモノと呼ぶミカンと里芋を差した盛り物は、御神饌というだけでなく、花の一種とも見てとれる。
掛け餅は、直径20cmほどの丸餅を竹で挟んで本尊前に吊るす。オコナイの集中地域の滋賀県の湖北には掛け餅は無く、滋賀県では甲賀地方あるいは島根県の境港市などでみられる方式である。中島誠一氏(現、長浜曳山博物館館長)によると、鏡餅とは本来は姿見の鏡のように掛けるから鏡餅と呼ぶようになった、という説であるが、まさにそのようなスタイルの吊るし方である。
宝印の存在。かつてはチワと呼ぶ誓紙のような和紙に「牛玉宝印寿楽院」と版を捺して竹に挟んで呪符としていた。現在は作られていないのが残念である。ただし棒をオコナイの最中に振る所作が有って、これを宝印と云っている。先端部分を見ると、宝珠のような模様が磨耗していても認められた。
カズラの巻き付け。白口葛を直径25センチくらいになるように何本もこよりにして、2mくらいの輪にして鴨居から吊るす。このカズラには造花の副花と称するもので飾り、また樒でカズラが見えないほどに覆う。

(内容の特異さ)
オコナイに先立ち、二十歳になった成年男子の村入りの元服の儀が行われる。村の一員として認められる儀式であり、元服の儀を経ることで「役入り衆」として『当屋文書(トウブン)』に名前が書きこまれる。
カズラ切り、と称する行為がある。せっかく荘厳した直径2mにもなるカズラの輪にアワ木を通してねじ切るのである。本尊の左右の二つが下がっており、かつては年寄り衆と若衆がねじ切る速度を争っていたそうであるが、今では一つをねじ切り、もう一つは来年に保存しておくそうである。二つあるのは陰陽であろうから、二つを切ることで合一の意味合いがあったであろう。そして山から切り出したカズラを切るということは、山ノ神まつり との習合も考えられる。滋賀県の湖東地域の山ノ神祭では、注連縄を 山の中で切る所作がある。春に先立ち山ノ神を眠りから覚ます目的の所作である。つまり北今西のオコナイは、山ノ神まつり との習合が認められると思う。
オコナイが終わった後で、住民が奉納した丸餅を競りで競売する。ご祝儀価格で競り落とすのだが、せり落とすと幸福になるといわれる。売上金は集落の行事費や堂の維持管理にあてられるという。

※ 上記のように、特色あるオコナイを拝見できましたこと、北今西の皆様に感謝申し上げます。


■準備

上左;カズラの輪を調製する。 上右;タテバナ、フクバナという造花を和紙で作り糊で貼っていく。

上左;堂を結界するジョウジキと称する切り絵を作製。 上右;モリモノという蜜柑と里芋を差した御神饌兼花。


■荘厳の数々

上左;掛け餅。鏡のように縦にして吊るす。 上右;住人によって奉納された一升丸餅と宝印。

上左;出来上がったカズラ。フクバナも差してある。 上右;タテバナ。

上;祭壇など堂内風景。


■ヤクイリ(元服式)

上左;役入りの儀、 上右;盃ノ儀。 村の衆が見守る中、村入りを認めてもらう挨拶と承認の盃が酌み交わされる。 盃ノ儀式の後には初座という寄り合い会合が行われる。その中でクジを引き、伊勢代参と熊野代参人が選出された。 伊勢講、熊野講の名残であろう。


■オコナイ


上3枚;宝印の儀式。今年役入り衆になった若者が棒に付いた宝印を持って振りながら堂内を三周する。先端には宝珠あるいは熊野那智大社の72羽の八咫烏を用いた「那智瀧宝印」と思われる柄が磨耗して認められた。かつては版として捺していた時代があったのかもしれない。 宝印は牛玉宝印と呼ばれ、護符あるいは祓い具という呪具の一種と思えばいい。

上;役入り報告の儀式。役入り衆を神仏に報告する儀式で、当屋文書(トウブン)を総代が読み上げる。

上;読経。般若心経を唱える。

上4枚;カズラ切り。般若心経を唱え終わるとカズラの輪の樒やフクバナを取り去って、カズラをねじ切るように荒々しく巻き上げたり下げたりをする。10分ほど格闘し、やっと切れると歓声に包まれた。独断で、山ノ神祭との習合と推察している。

上2枚;切れたカズラが見守る中、ウタイヨミ(ソヨナ)が行われる。謡譜を見ながら歌うのだが、阿弥陀さんがこれを歌いながら修行されたという言い伝えである。ソヨナというのは、歌詞にソヨナと付くからであるが、「〜だそうだね」という伝え聞きのスタイルの歌なのであろう。阿弥陀さんに奉納する歌、あるいはカズラ切りで山ノ神を迎えた後だから、山ノ神を接待する歌謡であろう。

上;オコナイの一部ともなっている、丸餅の競り。ご祝儀価格で競り落とされるのに驚いた。元々は自分たちが各家で一枚づつ搗いて持ち寄ったお餅だからだ。


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Last Updated  2013-02-01