日本! (近江の祭・火祭)
No.4 松明(八坂神社、小田神社)近江八幡市
■八坂神社(友定・野田の松明)、八坂・出雲・八幡神社例祭
撮影場所&日;滋賀県近江八幡市友定町、平成20(2008)年4月5日
撮影機材;Nikon D300+VR18-200mm、D80+SIGMA10-20mm

松明を奉火する行事は近江八幡市だけでも三月後半から五月初めにかけて、あちこちの神社例祭の宵宮で行われる。ただ注意しなくてはならないのは、松明行事が祭礼の主目的や主行事ではないということである。松明行事は祭りの一部分であって、鎮魂儀礼の一種あるいは付随ともいえるのである。宵宮だけをみても太鼓をお神輿のように練る巡行や、拝殿での神事を伴う例が多い。そして本日(ほんび)の祭礼へと引き続いていく。鎮魂儀礼の一種としては、“神いさめ(神霊を囃す)”とも考えられる。一方、付随と思われるのは、左義長のような浄化する側面が無いという指摘もあるからである。江戸時代の八幡宮(日牟禮八幡宮)神事松明図では、今日のような7〜10mもの長大な高さの笠松明が描かれていないことから、祭りが見られる側面が強くなった幕末期ころに現在のような松明祭りになったということである。元々は宵宮に神降しする場合、神々の降臨される目印としての灯りの松明がその目的から離れて、後世に興味を引付ける行事として発展していったと考えるのがふさわしい。この近江八幡市の各地の春祭りにおける松明は、分布が八幡を中心に限られていることから、前記の絵図が描いている日牟禮八幡宮の八幡祭りが元祖と考えてもよいらしい。
近江八幡市内の松明祭り(あえてこの表現をするが)は、実際は複雑な氏子域の交差をもって行われて、文にするのが難しい。春祭りが個々の村で行う「小祭り(こまつり)」と、複数の村が郷として行う「大祭り(郷祭り)」があるだけでなく、各村の氏子が郷内の違う氏子域の産土神社へ交互に出かけて祭礼に参加したりするからである。例えば八坂神社において、松明を出すのは所在地の友定町と近所の野田町である。それでいながら野田町は自分の町内の八幡神社で同時に小祭りを行う。そして更に複雑なのは、その野田町や友定町も近所の御所内町の出雲神社例祭に同日に参加していたりもするし、出雲神社氏子が八坂神社例祭に参加してもいたりする。つまり、一つの郷を構成する複数の村が同日・同時に祭りを行いつつ、相互に参拝し合うのである。かといって友定町の八坂神社の宵宮に松明を出すのは、野田町だけだったりする。野田町は産土社で祭礼を行いながらも、八坂神社傘下の村の様相であり、何らかの結びつきがあってそのようになっているのだろう。その何らかとは、井郷(ゆごう)や宮郷などの結びつきの強さの強弱とも考えられる。すなわち井郷とは用水の水利用における結合であり、宮郷は地域の中核的神社の祭祀を共同で行う結合である。友定町八坂神社例祭の構成は、二重構成になっている。四月と五月の祭典を、四月に結合させてあるのだ。宵宮は四月例祭で、本日(ほんび)の午前11時からが菖蒲祭りの五月例祭となる。
今回、初めて近江八幡市内の松明奉火の宵宮を奉拝・撮影させて頂いた。が、参列されていらっしゃる氏子さんに話しを伺っても、その各村の祭礼参加の様相が複雑で、現地ではさっぱり分からなかった。最近、ようやく絡まった糸を解すように少々分かってきたかナ、程度になってきた。

上写真; 出雲神社・聖神社の榊と代表も参列。巫女が三社分、舞をまう。藁葺き屋根の拝殿は満開の桜と相まって、誠に美しい国・日本!の情景であった。

上左写真; お囃子の渡り込み。後ろに、開き松明とオボン松明が見える。  上右写真; 三社の代表による相互参拝の儀。

上写真3枚; 野田町の開き松明(笠松明)と、友定町のオボン松明(大松明)奉火


■小田神社 郷祭り(小田・十王・江頭)
撮影場所&日;滋賀県近江八幡市小田町、平成20(2008)年4月12日

小田神社は、小田・十王・江頭の三町を氏子とする郷社である。この三町は、中世の荘園の結びつきによっている。各町に祭礼団があり、宵宮夕刻になると三町の太鼓がお神輿のように練られて小田神社に渡り込む。このうち江頭町のみは郷祭りに先立ち、産土社の日吉神社で小祭りを事前に行っている。一旦、小田神社に集結した太鼓は、19時半ころに宮司・氏子総代・稚児仲間代表そして太鼓の祭礼団が、氷解神社へ渡御する。20時ころ、一行が氷解神社に着くと、打上げ花火に仕掛け花火を始まり、まず稚児松明(高さ二間〜約3.7m)が奉火される。稚児松明が点火されると、そこから残りの四基の笠松明に一斉に火がかけられる。この笠松明の四基は、江頭町が一基、十王町も一基そして小田町が二基奉納する。小田町と十王町では本日(ほんび)の午前中に子供神輿を担ぐ。一方、江頭町では「稚児仲間」という独特な組織がある。江頭の特定の家だけで構成され、稚児松明を作り奉納するのである。そうなのだ、一番最初に奉火される稚児松明は、この組織が作った松明なのだ。この組織、一種の宮座とも云えるかもしれない。この組織、祭礼の日(本日)に稚児を出すことでそのように呼ばれるが、稚児元とか神事仲間とも呼ばれている。稚児は本日の午後に、江頭町の産土社の日吉神社へ社参するようである。このように、本来は祭礼全体の中における松明という視点が必要であろう。なれど時間的制約から、今は松明だけを撮影している。今後、宵宮と本日(ほんび)と連続して奉拝・撮影する必要性を痛感している。
さて、小田神社の宵宮は、背後で連続して打上げ花火が上がる中での松明奉火であり、炎のスペクタクルといえる大行事であった。

上写真; 三つの町の太鼓が、宮入する。

上写真; 神社前で子供松明の奉火。子供の居る家は、子供松明を宵宮の日に門口に出しておく。そして夕刻に奉火する。笠松明のミニュチュア版であるが、大きいものは1mほどある。子供の招福除災祈願である。

上左写真; 子供松明奉火、 上右写真; 打上げ花火


上写真4枚; 三町の笠松明の一斉奉火。


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Last Updated  2010-01-01