■平成26(2014)年8月15日(金) 撮影、 滋賀県東近江市青山
お盆の精霊迎えが青山では、愛知川河川敷において斎場を設けられて行われる。14日が精霊迎えで、翌日が精霊送りである。
精霊迎えと送りは墓地ではなく河川敷で行われるが、いわゆる賽の河原であって川が三途の川として冥界と現界の結界を現しているのかもしれない。
青山においては精霊迎えの前日に河川敷に自然石を用いて“お地蔵様”が組まれる。現地の人に訊ねるのに石組みを仏様と呼んだら、地蔵様です、と訂正された。このことは石組み自体が祖霊の姿を表したり、祖霊一人の供養塔ではないということになる。石組みされたお地蔵様は、石を並べて囲いがなされる。或る石塔群(地蔵様群)では、まるで団地のように集合的に石塔群が合体していた。尋ねると、近所の家が集まってひと囲みになっているという。その内の一軒一軒の石塔は九基である。近所の家で、九基にしようと話し合いがなされたのだという。石塔は一基が一代の先祖、それも当主を意味するという。現実には元禄時代の十代前くらいまでご先祖は遡れるということだが具体的に代の数は並べないという。だがこのことは石塔が地蔵様であって個人を現していないということと矛盾をはらんでいる。代々のご先祖をお地蔵様がおまもりしている、あるいはお地蔵様の姿で還ってこられるということかもしれない。現在は浄土宗だが、宗派に関係なく同様な行事に青山の人は参列してご先祖を迎え、そして送られるのだという。
撮影させて頂いたのは、精霊送りの15日だ。早朝、子供たちが河川敷堤防に一列に並んで集落に向かって「早よう参られほんな〜」と連呼する。そうすると集落から住民が三々五々河川敷の斎場に向かってくる。お線香や松明の燃える匂いが漂う静かな河川敷には、住民が川原石を踏みしめる音だけが静かに聞こえていた。
|